先に述べた見沼代用水路が完成すると、そこから取水する新たな水路がいくつもできた。その一つに赤堀用水路がある。流域の水田耕作を可能にし、灌漑用水路だ。

 高度成長期だった昭和54 (1979) 年、都市化の進展に伴う緑地の減少に対し埼玉県は、ふるさと埼玉の緑を守る条例を制定した。特に景観の優れた緑地を“ふるさとの森”に指定。当時市内で指定を受けた地域は、安行地域の興禅院ふるさとの森、赤堀用水沿い斜面林ふるさとの森など9箇所だったそうだ。その条例は後に市に移管されて、後者は「ふるさとの森興禅院・赤堀用水沿い斜面林」の名称で呼ばれる。ナラやクヌギが茂る雑木林の斜面林だが、この場所こそがイチリンソウが咲き、万葉植物が見られ、湧水が光る川口の里山。人の手入れにより守られる昔ながらの美しい風景と、生き物が共生できる環境を、親しみを持って“里山”と呼ぶが、まさに川口の里山だ。

静かな雑木林にあり、心地良いリズムで流れ落ちる斜面林の湧水

 ここで斜面林の整備や生息する動植物、飛来する鳥や虫、そしてイチリンソウの保全活動などをするのが、安行みどりのまちづくり協議会。同会は、安行地区の歴史や文化を多くの人々に伝え、緑化産業の発展と緑豊かな環境づくりを目指すまちづくり団体として、平成9(1997)年に発足した。同会のメンバーは、植木の生産農家など緑の産業に従事する方だけではなく、会社員や教員、住職、主婦など多彩な人々で構成する。代表の小林進会長の“始めてみなければわからないことがある”を受け、現地調査から学習をスタートした。

 調査の始まりは、地区の境に放置されていたごみの片付けから。それまでは立ち入ることが無かった斜面林で、集めたモノは4トントラックで3台分という大量のごみ。「斜面林はごみの捨て場所」だった事実は認めざるを得ず、がっかりしながらも心は次の段階へと切り替え、知恵を出し合う。「きれいになった後を、地域の皆様にはぜひ見てほしい」と。

(Visited 14 times, 1 visits today)
0